Hallo!guten tag!ハローグーデンターク!
いつもフランス語で挨拶をしておりましたが、今回観賞したオペラがあまりに感動したのでドイツ語で挨拶したくなりました。小学生の頃、朝ごはんの時間がちょうどドイツ語のラジオ講座だったので、妙に懐かしい挨拶です。
さて先日、1年ぶりにオペラの鑑賞をしてきました。先日のバレエ鑑賞のブログでも述べているいた、怒り狂ったカルメン初日以来の鑑賞です。
そのカルメンについてはこちら:
前回のバレエ鑑賞はこちら:
新国立劇場はU25チケットという制度があり、我々25歳以下の入場者は大体30,000円前後するS席のチケットを格安で手に入れることが出来ます。(今回のオペラは5,000円での購入でしたが、バレエはなんと1,500円前後で購入が可能です。)そのおかげか客席に同じ年頃の若者も多く、本当に素晴らしい制度だと思いました。今回も1階11列とかなり近く、オーケストラのメンバーの表情もよく見えるほど。迫力のある舞台を愉しみました。
今回の演目はモーツァルトの『魔笛』。小学校の教科書には同じくドイツ語の歌曲、シューベルトの『魔王』が出ているので若干紛らわしいですが、今回は息子が連れていかれる話ではなく、魔女が娘にブチ切れるシーンがクライマックスの作品です。
あまりの感動とショックに勢いあまって珍しく感想をインスタのストーリーで投稿したほどでした。感動が残っているうちに、色々調べつつ、覚え書きのような感覚でこのブログに記録しておこうと思います。
復讐の炎は地獄のように我が心に燃え、メラメラ怒る夜の女王のアリア

この「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え:Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen」という暑苦しい題名がとても好きなので何度も使いたくなります。これは『魔笛』の中でも最も有名な曲であり、コロラトゥーラ技巧と最高音ハイFというオペラでも稀な高音を使用するため、歌うことが容易ではない曲です。とはいえ、その特徴的なフレーズは一般人の私でも口ずさめるほどですので、知っている方は結構多いのではないのかと思います。
「のだめ」でも第一話で声楽科のマドンナで千秋先輩の元カノがこの曲を歌っていました。むしろ私はその印象が非常に強く、強すぎる歌詞もイメージそのままでしたので、私同様それで覚えた方もいるのではないでしょうか。
この曲の一番盛り上がる部分、最も有名なパートは
meine Tochter nimmermehrーーーーーーーーーーーーーーー 私の娘ではないーーーーーーーーーーーー
と、鳥の鳴き声のような特徴的な連続音を発している(コロラトゥーラ技巧)のですが、おそらくここだけはあまりに有名すぎるので聞けば誰しもが分かると思います。変な歌詞ですが…
今回の夜の女王、安井陽子さんも素晴らしかったですが、YouTubeにはなかったので代わりに私のお気に入りをいくつか載せます。
まずは美しすぎる日本の田中さん:
衣装が凄い:
★歌唱力、狂気的な衣装含めて一番のお気に入り:
魔笛と啓蒙思想
フランス文学部出身としましては、啓蒙主義というとついうっかり哀れなカンディード(*1)を思いだしがちですし、ついでにそれを学んだあの寒い教室を思いだしがちです。
フランス語でphilosophie de la lumière、「光の哲学」と呼ばれる啓蒙思想・主義とは今までの先入観を見直して、知識や理性といった光に従って合理的に考えること(*2)を薦める運動の一つです。18世紀ヨーロッパで流行した哲学的ムーブメントで、本質的に批判的精神がメイン。強烈な社会批判、既存の体制や思想に対する破壊活動と言った面が大きいといったイメージがあります。
今回の『魔笛』ではそのパンフレット上でも「『魔笛』が内包する啓蒙思想に植民地主義を通して光を当て、「善」や「力」についての洞察が込められています。」と説明されているように、二者対立構造が際立っており、かつその文脈を前提とすることで理解できる作品だなと感じました。
ただ『魔笛』然り、啓蒙思想・主義然り、勿論何事にも矛盾やジレンマ、パラドックスはあります。そもそも善や悪の概念というものも、その背景によって容易に逆へ変わり得るからです。
これを受けて、西洋諸国における植民地支配を思いました。つまり、個々の文化を西洋社会的に改定していくことは、果たして正しいことだったのか?という点で、です。昨今のロシアとNATOとの関係を見ていてもそもそもの問題はそこにも起因するような気がしてなりません。
後に紹介するケントリッジ演出にも関わる内容ではありますが、植民地主義を正当化する一環として「啓蒙」が使用されていたのも事実で、光と闇ー白と黒というだけでも、現在まで続くかなりグロテスクな構図を考えてしまいます。
美しい演出、舞台上に映えるドローイング

少し重い命題、怒りと暴力のエネルギーが大きい中でも、終演後の何とも言えない爽快さを感じられたのは、アニメーションチックかつ神秘的なプロジェクションマッピング、演出があってこそではなかったのかと思います。
今回の演出は南アフリカ出身のアーティスト、ウィリアム・ケントリッジ氏によるもの。調べてみるとかなり興味深い経歴の持ち主だったので下記をご覧下さい。
ウィリアム・ケントリッジは1955年に生まれた南アフリカの美術家である。(…)美術家とはいっても、美術大学で教育を受けたわけではない。政治学とアフリカ研究で大学を卒業した後、別な機関で芸術の学位もとったが、1980年代初頭にはパリに赴いてマイムと演劇の勉強をし、1991年まではヨハネスブルクで演出や俳優の仕事をしていた。だが結局、自分には俳優の才能はなく、自分にできるのはドローイングなのだと悟ったそうである。
引用:コラム ケントリッジ演出の『魔笛』を視る 吉岡 洋|モーツァルト『魔笛』公式サイト|新国立劇場 オペラ (jac.go.jp)
今まで見たことがない、黒い背景に描かれた白いドローイングは、さながらアニメの世界のよう。コマ撮りされた白い線が動いていくシーンは詩的でありつつ、現実と魔法の世界が混ざっていくような不思議な魅力がありました。なんでも、これこそが彼の作りだした新しい表現メディアなのだとか。

「京都賞」授賞の際の紹介にも「素描という伝統的技法がアニメーションやビデオ・プロジェクション等の多様なメディアの中に展開」していることを挙げ、従来メディアと現代的なメディアの融合によって生まれる新しさについて特に重きを置かれて紹介されていました。

彼自身のバックボーンは作品へ色濃く影響しているようです。アパルトヘイト問題の解決の為弁護士をしていた父の下に育ち、大都市ヨハネスブルクで政治とアフリカ学を学び、パリに出たという経歴。それは演出に限らず彼が作る全ての作品において、脱植民地化、政治紛争、第一次世界大戦におけるアフリカの役割など 非常にデリケートなテーマについて、詩的かつ批判的なビジョンをもたらし(*3)ています。
今回の演出も変わりゆく物事や善悪の基準についての暫定性を、エスプリの効いた美しいアートと共に提示していました。
これらが意味としてはかなり重いものの、何故か終演後に爽快感を感じさせられたのは、それを踏まえたうえでの演出作品というプロフェッショナリズムによるものなのでしょうか。

個人的所感
私は以前からかなり感動しやすい質ではあったものの、このところ感動して涙を流すことが多くありました。今回のオペラも然りで、心の琴線に触れる芸術作品に向き合うほど、どこか非現実的な地でバカンスをしているようなリラックス感を得られるようだなと思います。
ちょうど4年前に妹とニューヨークに行った際、ブロードウェイで『アナと雪の女王』を鑑賞しました。演者の迫力にも圧倒されましたが、何よりも印象的だったのはその舞台装置です。エルサが周囲を凍り付かせるシーンでは客席を含めた会場全てがパリパリと凍り付いていくようなプロジェクションマッピングがあり、あまりの迫力に、隣の席に座っていた4歳くらいの男の子は驚いて椅子から転げ落ちたほどです。
まるでギャグみたいなんですけれども、未だに私は何か驚くシーンがあるとその椅子から落っこちた少年を思いだします。今回の舞台でも何度も心の中で彼が登場して、一緒に椅子から転げ落ちました。
この椅子から転げ落ちたさについつい舞台を求めてしまう私がいます。
GWには同じくU25チケットで東京バレエ団のロミオとジュリエットを鑑賞予定です。(最近ロミジュリが流行っているのでしょうかね)秋山 瑛さんという長年の私の推しを生で初めて拝見するチャンス、勿論彼女がジュリエットですのでとても楽しみです!
ではまた、Au revoir!
参考
*1フランスの啓蒙思想家ボルテールの哲学小説。1759年刊。原題は『カンディードまたは楽天主義』
https://kotobank.jp/word/%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%89-1520850
*2 【要約】啓蒙思想(主義)とは、一言でまとめると〇〇。意味をわかりやすく簡単に解説 – The Keny Press
*3 ウィリアム・ケントリッジ | 世界のアート作品・絵画を買いたい・売りたい |CURIO(キュリオ) (curio-w.jp)
夜の女王のアリア(第二幕)について質問です。オペラについての知識がな… – Yahoo!知恵袋
ザラストロと夜の女王/昼と夜 | ムジカマニフィカMusicaMagnifica (ameblo.jp)
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