ネクサスホール:どうしたら写真展の良さが分かるのか?『ジェーン エヴリン アトウッド展』

GWに訪れた2つの美術館のうちの一つです。

銀座はシャネルのネクサスホールで開催されていた『ジェーン エヴリン アトウッド展』に行ってきました。

私は昔から写真の良さがいまいち分からず、展示会についても足が遠のきがちなのですが、ネクサスホールはいつもそんな写真たちを身近に魅力的に感じさせてくれます。

本展覧会は、彼女の日本初の2022年3月30日(水)から5月8日(日)までの開催。日本では初めての個展とのことです。


Jane Evelyn Atwood

Jane_Evelyn_Atwood_par_Claude_Truong-Ngoc_mars_2020.jpg (2400×1600) (wikimedia.org)

ジェーンエヴリンアトウッドはアメリカ出身の写真家で70年代からパリで活躍していたとのこと。アート的な写真を撮るアーティストでありつつ、エイズや刑務所内、震災の様子を長時間密着取材し、報道カメラマンとしても動く二面性を持った人物です。

ともすればスキャンダラスになりがちな性的な写真も多く、醜態と美学、カメラが写す現実世界の痛々しさなどを感じた展示会でした。

下記は私が見た中でマイルドだと思ったものです。他のものは写真で残せませんでした。

「過酷な現実を捉えながらも、冷酷さや搾取的な印象を受けないのが特徴」であるとファッションプレスでは紹介されておりますが、私はそうは思えません。

パリ拠点の写真家ジェーン・エヴリン・アトウッドの日本初個展、銀座シャネル・ネクサス・ホールで – ファッションプレス (fashion-press.net)

特にそう感じたのは、阪神淡路大震災の被災者を写した写真を見た時。日本語の新聞にくるまって暖を取る男性の写真を、私は直視出来ませんでした。読者が見るという前提で撮られる写真は果たして搾取ではないと言えるのでしょうか?

ロシアのウクライナ侵攻の当初、BBCか何かが「同じ白人がやられている」という、シリアやウイグルの問題を全く無視した報道が問題になったことは記憶に新しいですが、今回この写真を見ると言わんとしていることがなんとなく分かる気がしました。(勿論白人至上主義の文脈という意味ではありません、)つまりこれは同じ日本人の自分の家族や友達にも成り得たわけで、あまりにも共感してしまい、単なる災害の記録として割り切って鑑賞することが出来なかったわけです。

そういう風に考えてみると、他の写真たちも誰かしらの生きるプライベートであり、果たしてその一部を切り取ったものを単なる「アート」として消費するのは、現代に生きる人間として正しいことなのでしょうか。

それは19世紀ー20世紀の人間動物園と何が違うのか?尊厳?尊重?対価?それともモデル自身が望んだことだったから?「搾取」という言葉が脳内をよぎりますが、彼女を紹介する様々な文脈からそんなことは「ない」らしい。このように自分の不勉強さと混乱に少しうんざり、辟易し、しかしながらこの展示会が持つ独特のオーラに飲み込まれ、彼女が撮る写真の純粋な美しさに惹かれている自分も発見しました。


ーどうしたら写真展の良さが分かるのか?

ー今のところ私の考えられる答えは作品や展示会が持つ、その二面性を愉しむこと、それが出来る人間的な余裕を持つことだと思います。例えば今回は搾取の痛みと構図や色合いの美しさという二面性で、人間的な余裕とは背景を理解する教養や知識であったり、純粋なる感受性とそれを処理する理解能力のようなものだと言えるのではないでしょうか。

いずれにせよ、私にそのような人間的余裕はなく、このブログにまとめることにすら少し時間がかかってしまいました。

ブログを書いたりデザインをする際、あまりの自分の凡庸さに頭を抱えることがしばしばです。下記の宮沢賢治の言葉が言い得て妙でしたので引用し今回はここまでとさせて頂きましょう。

「わがこの虚空のごとき、かなしみを見よ。私は何もしない。何もしていない」(宮沢賢治)

ではまた、Au revoir!


前回のネクサスホールでの展示:

エルメスでの展示:


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