ジャックルコック国際演劇学校とフィリップゴーリエ国際演劇学校での研修について:Rencontre sur l’éducation artistique en France

飯田橋のアンスティチュ・フランセで行われた、『鼎談「フランスで身体表現を学ぶ ~ジャック・ルコック国際演劇学校とフィリップ・ゴーリエ国際演劇学校での研修について~」Rencontre sur l’éducation artistique en France』に参加しました。

アンスティチュ・フランセとは、フランス政府公式機関としてフランス語講座を開講し、フランス発の文化、思想、学問を発信している施設です。東京から沖縄まで、国内に5施設あるそう。

今回のお話もそのうちの一つのプロジェクトで、たまたま時間があったので伺ってみることにした次第です。ちなみに鼎談とは「三者が向き合って話すこと」です。なかなか目にしない言葉ですよね。

さて、今回はかなり熱量の高い公演会/トークショーで無料で聞くには勿体ない内容。留学や身体表現的な話を聞きに行ったのですが、観客の9割が演劇関係者というような状態で、前述の学校出身者も多く、まさに井の中の蛙状態でした。

今回もあくまで自分のメモと整理用としてこのブログに残したいと思います。今後自分のインスピレーションに加えたい、新しい世界でした。恥ずかしながら全くの部外者なので下手なまとめで気分を害する方がいたらすみませんと先に申し上げます。

ニュートラルマスク

Jacques Lecoq and the Neutral Mask by Stephanie Richardson (prezi.com)

談話者の一人、石川さんがお話されていた中で、最も印象深かったものです。多摩美を中退し、ジャック・ルコック国際演劇学校で2年間身体表現を学んだ彼ですが、学校でまず何を行ったかというと、マスクをつけて体を白紙にするところから授業が始まったのだとか。もう一人のーさん曰く、ルコックは身体表現について2年間かけて体系的に教えていくのが特徴でマスクはまさにその入り口とのこと。

Jacques Lecoq and the Neutral Mask by Stephanie Richardson (prezi.com)

私が驚いたのはマスクをつけて動き出した瞬間に、その場の空気を全て支配したことです。顔を使わないからこそ動きに意味が出るのか、それとも表情がないものへの潜在的な恐怖心故か、一挙一動にその理由を考えてしまうことに少なからず衝撃を受けました。それこそ古来から根深い人種問題も顔がなければ正直分からないのであって、そういう意味でも、思い込みや文化を超えた人間の動きとしての根源的なものを感じました。

このマスクでのトレーニングにより、自分自身の発見にもつながるそうです。


クラウン

Marc Chagall. A Street Dancer and Gypsies. Costume design for Scene II of the ballet Aleko. 1942 | MoMA

さて、前述のニュートラルマスクはフルフェイスのマスクでした。彼らは仮面は三つの形態があると言います。前述のフルマスクと人間(自分自身)。その真ん中に在るのはマスクの究極であり、人間に近い、鼻だけを覆ったクラウン。

クラウンに関しては、もう一人の談話者、野口さんが留学の目的を「自分自身のクラウンを探しに行った」と話していたことにも話が繋がります。(私は話を聞いていても途中まで車の話をしているのかと思って、全く意味が分からなかったのでそんな方は下記の引用をお読みください。)

クラウンってなに?ピエロとの違いは?大道芸の種類 | ちば大道芸 広報部 (chibaddgpr.com)

クラウンという道化のグループがあり、あくまでピエロはその中の一種、哀しみを表す存在とのこと。

太宰治の『人間失格』では「お道化を演じる」ことについて何度も描写があり、ついに道化を演じているうちに本当に道化になってしまった=人間失格というストーリーでした。

「舞台に出て7秒で笑わせられたらそのあとも出続けていい、1分笑わせられたら本物だ」とお話されていて、そう考えると特に人間の純粋な感情の爆発である笑いを引きだす存在というのはどこかしら人であって人ならざるものなのかなと思います。身体表現という面においてまさに言葉を使わないクラウンは究極の表現者と呼べるのではないでしょうか。

彼はルコックもフィリップ・ゴーリエもどちらとも通われた方で、「クラウンについて学ぶにはルコックでは足りなかったからゴーリエに行かれた」とのこと。フィリップ・ゴーリエ氏についても調べてみると、彼自身もルコックに指示され、のちに自分の学校を立ち上げています。「クラウンのマスター(修士号)」があるなど知りもしなかったのですが、今回でそういう世界があるのだと学びました。

Philippe Gaulier – Wikipedia

結果として、-氏は彼自身のクラウンを見つけだしたそうです。


フランスで芸術を学ぶということ

トークの前にも二つの学校はフランス語の台詞を話すことに重きを置くのではなく、あくまでその身体的な表現方法を通して俳優を養成していると話されていました。それぞれが求めていたものや経験を経て日本に帰国したとのことです。


ここでは彼らのお話を経てフランスで芸術を学ぶ、教育を受けることについて考えてみようと思います。

まず、自分自身や周りの様子を見て、フランスの芸術における高等教育は日本の比ではないと思います。と言いますのも、勉強を出来るチャンスも、それをパフォーマンスしてお金を貰うチャンスも純粋に多いからです。

お二人もトーク中に国立の演劇学校の充実さについて語られていました。

フランスではダンス・サーカス・演劇・大道芸について社会的環境に関係なく訓練を受けることが出来、例えばコンセルバトワールは380校あります。これは音楽や演劇などを習う機関で公立なので学費も格安。パリ・オペラ座のバレリーナもコンセルバトワール出身者は大勢いるそう。(こちらのブログがかなり詳しく説明して下さっています。:https://nichi-nichi-france.com/conservatoiresenfrance/?msclkid=8d9db9e6b61d11ecad693a60d8f045b2

現在日本には、そのような制度や国立の設備はないとのこと。国を挙げて芸術を保護し、育てる意識があるので芸術を志す方はフランスで教育を受けるのは良い選択なのではないかと思います。ただ、野口さんは今回の留学を日本の文化庁の制度を使って行っているので、そういう意味では、教養のアウトソーシングにお金をかけるという日本政府の選択は西洋美術においてはいい選択なのかもしれません。


また、語学に関しては二人は渡仏にあたりフランス語の勉強をそれぞれ、国内でアテネフランセ、アンスティチュフランセでされたそう。それぞれ歴史あるフランス語の勉強機関で、アテネフランセはアンスティチュ・フランセ東京より年間にかかる金額が安いと言われています。アンスティチュフランセは一回の授業料というよりもそのコースに対して払うような感じです。体系的に学ぶことができるものの、駅から遠すぎるのと少し高いので、純粋に通学することに少しハードルはあります。

ただ、現地では言語の面でとても苦労されたとのこと。「地面がなくなる」「自分の立場がわからなくなって怖かった」と語られていたのが印象的でした。もう10年ほど学習して未だにフランス語が満足に話せない私が言うのもなんですが、語学はあくまで生活の土台なので出来るに越したことはないと思います。


今回お話を伺って私が印象的だったトピックをまとめてみました。新しい世界や業界、優れたパフォーマーに出会うことは本当に刺激になりますね!

私は今年になってから、なんだか「無知の知」となることがとても多い気がします。あっという間に4月になってしまいましたが、22年前半の残り3カ月は、知識に限らず、経験や感受性を伸ばすものを意識的にインプットするような過ごし方をしたいと思います。

また初めて訪れたアンスティチュフランセは、図書館、建物ととても素敵なところでした。興味深い講座も沢山あったので、また時間が合う日は行きたいなと思っています。ではまた、Au revoir!


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