オーストリアはウィーン出身のテキスタイルデザイナー、上野リチの展覧会が三菱一号館美術館で開催中です。

上野リチ・リックス、通称「上野リチ」の大回顧展は世界初とのこと。昨年から京都・東京と巡回中だったようで、ちょうど東京に来たタイミングで観覧することが出来ました。
三菱一号館美術館は、東京の中でも特にお気に入りの美術館の一つです。昨年から全ての展覧会を訪れているのですが、毎回その展示量のボリュームに圧倒されっぱなしです。今回も例に漏れず、じっくり2時間半ほど作品を楽しみました。
過去の三菱一号館美術館のブログはこちらです:
さて、上野リチ。
彼女は19世紀末にウィーンに生まれ、日本人との結婚を機に来日、戦時下でも精力的に制作活動をしていたよう。今の時代ならまだしも、戦前に頻繁にオーストリア(ウィーン)と日本(京都)を行き来し、日用品、装飾品のデザインを手掛けていたというので驚きました。戦後は教鞭をとり、日本の工業アートの育成に尽力。生徒達による彼女の為の展覧会開催や、レストラン装飾の際の手伝いなどから彼女の人柄が見えるようです。
今回の展示物はすべて見ている人が幸せで明るい気持ちになる作品、一目で「かわいい」と思う作品たちでした。このブログに際し、どんなところが印象に残ったかというと、作品の「かわいらしさ」よりももう少し本質的な面、「作風が変わらない」ということでした。
少し考えてみましょう。
「変わらないことの重要性」

今回の展覧会を見る前に、専門の方から色々お話を伺っていて、その際「彼女の作品の特徴のひとつは生涯作風が変わらないことです。」という言葉を聞いていました。人生におけるターニングポイントと共に作風が変わっていくピカソとは反対に、基本的に作風がぶれず、自分の色を持っていると。
作品を見て、その通りだと思いました。彼女のキャリアのスタート地点である「ウィーン工房」というデザイン事務所での作品も、京都に住み日本の文化に触れてメルヘンチックな題材を扱うようになってからも、「リチらしさ」は一向に変わらない。それは物事を見た後にそれぞれの物体を単純化して、再構築するというプロセスが彼女独特のセンスによるものだったからではないかと思うのです。
私は元から自己肯定感が高い人間ではないので、最近はビジネス書や自己啓発本、英語のmemeやquotesなどで「いい人間に変わることの素晴らしさ」を説かれて、今までの自分が否定されたようで、「なんとか今の状態から変わらなきゃ」と苦しい状態がしばらく続いていました。
しかし彼女の作品を見て、「変わらず居続けること」、いわゆる「不変でいることの美学」のようなものはもう少し評価されてもいいのかもしれないと思い始めました。勿論彼女の作品のレベルやセンスが最初から高いということもありますが、「周りの環境の変化を内包し、自分の表現する幅を広げる」ということは芸術家でなくても取り入れられるマインドセットではないかと思います。
実際、戦下で彼女の見た目で日本にいることは簡単ではなかったはず。決して近くない日本からオーストリアまでの移動も、変わり続ける中にいた彼女だからこそ、その状況を受け入れ、固執せず、自分のデザインをし続けた、彼女の決意や勇気の片鱗のようなものが見えて、そのカッコよさにしばし圧倒されました。
観覧者に「幸せ」を与えるアートとは何か
私は展覧会前にレビューに目を通すタイプの人間です。この「上野リチ展」にあたり、インスタグラムやTwitterで「かわいい」「モダンでおしゃれ」という声に混じって「幸せになれる」「ハッピーオーラ」のような言葉があるのが気になっていました。
美術館に行った日はあいにくの雨。でも確かに中に入ってみるとそんなことも忘れるくらいポップで明るい作品たち。皆様がおっしゃる通り、確かに幸せを感じられる作品たちでした。

でも、その幸せの根源とはなにか?色合い?モチーフ?作風?
私が思うに、この多幸感の原因は、作品制作の動機、つまり「あくまで工業デザインとしてのアート」という点にあるのではないかと思うのです。絵画とは異なり、彼女の作品は、その後使用されることが予期されていたものでした。だから、幸せな気分を作らないといけない製作物であり、目的として幸せや幸福感があったのだと考えられます。
そういう意味では、この展覧会は他の色々な解釈がなされる絵画展とは異なり、確実に幸せな気分になれる展覧会と言えるのではないでしょうか。
ちなみに私が気にいった作品は40年台頃から数多くデザインされている七宝デザインです。野菜柄やボンボンの大きいテキスタイルも勿論魅力的ではありましたが、個性が凝縮されたような小物たちに興味を惹かれました。

三菱一号館美術館の素晴らしいところはミュージアムショップが充実していることです!今回も展覧会オリジナルグッズをはじめとし、彼女の出身国にちなんでオーストリアの商品を数多く取り揃えていらっしゃいました。


私と妹が小さい頃ずっと読んでいた『レベッカのお買い物日記』は主人公が買い物依存症という設定なのですが、美術館に行って、展示よりもミュージアムショップでの買い物の方が好きだというシーンがあって。少なからずそれに影響を受けている我々は、毎度毎度旅行先の美術館にてミュージアムショップを楽しみにしています。(以前のブログを読んだら同じことを書いていました)
この美術館にレベッカがいたら、絶対に数十万円分の買い物をしているはず。そんな気持ちで楽しむことも出来ました。
そんな本展覧会はGW明けまで開催しているようです。
ではまた、Au revoir!

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