芸術の秋・10月舞台鑑賞ログ:東京バレエ/新国バレエ/オデオン座/新国オペラ

9月1日より、2022/23年シーズンの公演が始まりました。私も12月でU25チケットが使えなくなるということもあり、異常気象もなんのその、是非今のうちに行かねばとしばらく鑑賞に忙しい幸福な日々が続く予定です。

今月は新国立劇場の演劇に始まり、オペラ、東京バレエ、新国立劇場バレエとかなり満足するラインナップで舞台を鑑賞しました。実際自分が踊っていて、離れてみて、また近づいてみるとこの世界の何と美しいこと。少し知識を増やしてから見る舞台は学生時代に観た同じ作品でも全く異なって見えますね。

夏の舞台観賞は下記の通りです:


①10月1日『ガラスの動物園(オデオン座招聘)』S席

フランスはパリのオデオン劇場からの招聘、イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出の『ガラスの動物園』はオペラハウスの中劇場で上演されました。


元は1944年に執筆された戯曲で、今回はフランス語での上演。著名な女優・イザベラユペールが主演を演じることから前評判は抜群、実際に劇場内はほぼ満席で開演前のトイレには長蛇の列が出来ていました。もちろん終演時はスタンディングオベーション。客席の国際色も思いの外豊かで、人気の程もその素晴らしさも思い知らされました。

ただ…私にはその良さは分かりませんでした。生まれて初めて(ピアノコンサートは除く)上演中に眠る始末。単に自分がフランス語を聞き取れなかったこともありますが、純粋に集中力が続かず、ひたすらおセンチなストーリーに耐えられませんでした。

バレエやオペラを見慣れている中でのストレートプレイというか、衣装や歌やダンスに頼らず一切を自分の語りのみで演じる人を観る、というのは新鮮な経験でした。次にどの国で見るにせよ、もう少し勉強してその良さを知ってから見たいなと思います。


②10月5日『ジュリオ・チェーザレ(新国オペラ)』S席

チケットの空きがあったので急遽鑑賞を決めた、ヘンデルの『ジュリオ・チェーザレ(Giulio Cesare)』(ジュリアス・シーザー/ユリウス・カエサルのイタリア語読み)🎭前述の演劇に比べると自分の中での興奮具合が全く違うので、ああやっぱり私は派手で大げさなものが大好きだなあと思った次第です。

上映時間4時間半!に少しビビりつつも、全ての幕が本当に面白くてあっという間でした。何よりシーザーのイケメンっぷり(女性が演じています)、クレオパトラの圧倒的な存在感と歌唱力、お洒落過ぎる舞台演出にすっかり引き込まれていました。

色々な演出で上映されているというこの作品。今回は2011年にパリ・オペラ座ガルニエで初演されたロラン・ペリー演出で、当時から大変な話題になったというものでした。ヘンデルの肖像画やシーザーの銅像など随所に出てくるフランスらしいウィットに富んだエスプリはさすが。何度でも観たい!


③10月16日『ラ・バヤデール(東京バレエ)』E席?

ずっと楽しみにしてきた東京バレエの『ラ・バヤデール』

ここ数年は東京バレエを観る機会が増えて、同団の層の深さと圧倒的な表現にただ圧倒されて打ちのめされています。いやはや、本当に最高でした。

彼らが上映する演目はロミジュリのクランコ版、今回のマクロワ版となかなか国内では観る機会が少ない、行ってみればマイナーなバージョン。それを観る機会を与えてくれるだけでなく、すべて物にして(しばしば本家を上回る出来で)観客を楽しませて下さるので、飽きさせません。今回も然り、素晴らしいキャスト、舞台演出、音楽も衣装に心踊らされました。

今回のバヤデールは特に東京バレエの十八番である「影の大国」を含めて、主役二名は勿論のこと、周りの層の厚さ、レベルの高さに感嘆しました。特にガムザッティーの存在感。ガムザッティ演じる伝田さんのテクニックと上品さと恐ろしさったら!是非是非彼女の演じるニキヤも観たいものです。

毎度目が行くブラウリオさんのブラーミン(大僧正)も最高でした。怒り狂った派手な坊主って、もうキャラが濃すぎて渋滞していますが、彼ほどあの役が似合う人は果たしているのでしょうか…。私は生まれ変わったらこのマクロワ版で、まずはブロンズ像で踊り狂い、ソロルで憎めないダメンズイケメンを演じ、目をかっぴらいて大僧正と、全部やりたいです。

ただふと頭に浮かぶバヤデール本来の「文化の盗用」や黒塗り問題、カースト制度。これって、今の時代もただのアートとして消費し続けてもいいものなのでしょうか。それについて研究している人もいそうなので探し、自分なりの意見を作ってみようと思います。

またここしばらくずっとS席での鑑賞だったので、U25シートの一番悪い席を引き当てたことは本当に残念でした。この席になるなら正規料金でS席を買えばよかったと、贅沢な後悔をしています。


④10月21日『ジゼル(新国立劇場バレエ)』D席

新国バレエ、22/23シーズンスタート。喜び勇んで初日へ。前評判、監督のインタビュー共に気合いが入ってるのが伺え、かなり期待していた吉田都版のジゼル。無駄が取り除かれ、純度が上がった完璧な作品でした。

これまでのジゼルの矛盾点を取り除き、整合性の取れた無駄のないストーリーやマイム、展開に加えて照明や衣装などこだわり抜かれているのが良く分かる、美しい舞台でした。その中での際立つストーリの悲惨さ。あまりに鮮烈で、でもどこか上品で。

ジゼルのピュアさとその成長(もう死んでいるけど)に対するアルブレヒトのクズっぷりの際立ち方と言ったら!バヤデールのソロルのダメ男どころではないです。分かっててやってますんで…そういう意味で演劇的な側面も楽しめる舞台でした。

今回も東バ同様U25チケットだったので、あまり良い席とは言えなかったのですが…上にいたのでウィリーの動きが良く見えてむしろ良かったのかもしれません。 始めて観た、蜂の習性みたいなフォーメーション。意識は持ちつつ意志は持たないただ周りに合わせるだけの軍団が、意志あるミルタを支える静かな怖さみたいなものを感じました。

それから嬉しいサプライズは一幕の、その他大勢(ペザント)を演じる男性たちのレベルの高さ。みんなカッコよくていちいちうまくて、つい双眼鏡が彼らに向きがちでした。

パンフレットもポスターもHPもめちゃくちゃ洗練されていてかっこいい新国立劇場バレエ団。私の大好きな爆弾のような東京バレエとはまた違った魅力で、こちらもまた好きになりそうです…


所感

観るもの、場所、食べることなど、人は一度良いものに触れてしまったらもうその下の物では満足しなくなるのでしょうか。

残念ながら、そうだと思います。これは多分我儘ではなく、自然に備わった向上心故だと思うのですが、今回のU25チケットでは満足できない事件が起こってから少し取り返しのつかない自分が出てきてしまったようで恐怖を覚えます。おそらく、もう少し歳を取り、自分の心や教養にもう少し余裕が出来たなら、その違いさえも楽しめるのかもしれませんが…穏やかな自分を気長に待つべきでしょうか。

劇場ではコロナ禍を経て、また人が集まり、以前のような盛り上がりをひしひしと感じた秋でした。幕間のアルコール提供なども少しずつ前のように戻っていて、特にトイレの長蛇の列でウンザリする一方、そんな賑やかさが喜ばしいという妙な気持ちになりました。

舞台上を観るあの数時間。乾いた土に水が染み込んでいくような、真っ白な空間が色づいていくようなこの感覚は、まるでコロナ禍に本当は出来るはずだった、制限された様々な日常を少しずつ綺麗なものに上塗りしていくよう。今日からまた頑張ろうと、今まで以上に力を貰えた10月の公演でした。

来月はモンテカルロバレエとロシアオペラのチケットを購入しています。わりと異色の取り合わせですので、今からとても楽しみです。

ではまた


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