11月読書まとめ

読書メーター内の「まとめブログ機能」を知ってから、すっかり月々の読書を振り返って楽しむようになりました。今月は結構1冊1冊に思い入れが募る作品が多く、濃厚な読書の秋となりました。

青空文庫で太宰の『斜陽』『津軽』というテイストも趣旨も真逆の本を読めたこともいい体験でした。国籍問わず近代・古典の小説を読みつつ、ルポや伝記も読んだので、わりとバランスの良い月だったといえるのではないでしょうか。

昨月の読書まとめは下記の通りです:

11月の読書メーター
読んだ本の数:13
読んだページ数:3678
ナイス数:157

私にぴったりの世界私にぴったりの世界感想
ところどころフランス語系の表現があるも、どうもフランスっぽくないなと思っていたらベルギー文学とのこと。
淡々と描かれる、作り手・売り手として服飾業界に関わるユダヤ系一族の文化・社会史。あまり読んだことのないタイプの作品で、こちらも淡々と読み終えました。社会的な意味での服飾の意味や、古くからの店、商店街一帯がファストファッションに置き換えられていく衰退の様は少し勉強になりました。

読了日:11月30日 著者:ナタリー・スコヴロネク
共犯者共犯者感想
恥の意識ほど人の口を閉じて寡黙にするものはないのでは。
単なる #metoo小説として読むにはあまりにも辛すぎる、あまりにリアルで身に覚えのある感情。何枚かの頁を捲る毎に胸が抉られて、読むたびにアイメイクを直していました。(つまり電車で読むべきではない本ですが、家でゆっくり読む本でもないです。)

 

読了日:11月25日 著者:ローラ ラフォン
津軽 (新潮文庫)津軽 (新潮文庫)感想
この素晴らしい作品に対してあまりに陳腐ですが、これほどまでに愛に溢れた旅行記があったでしょうか?
シャイでユーモラスな語り口調、気取って嬉しそうに知識を披露する姿が目に浮かび、読み始めた瞬間から太宰の中でも最も好きな本の一つになりました。ちなみに、よく聞く「本当の気品というものは、真黒いどっしりした大きい岩に白菊一輪だ。」という言葉は飲みの席でうっかり出た暴言。『斜陽』的な雰囲気で出てくるのかなと思っていたらあまりにカジュアルに登場したので驚きました。

読了日:11月24日 著者:太宰 治



美しき愚かものたちのタブロー (文春文庫 は 40-6)美しき愚かものたちのタブロー (文春文庫 は 40-6)感想
「戦闘機じゃなくて、タブローを。戦争じゃなくて、平和を。」
夢見がちだと言われてもわたしはこの言葉が持つ力は大きいと思います。この本の登場人物は美術品収集家とその周りを取り囲む、自らの信念を貫く本当に暑苦しくて美しい「愚か者」たち。原田マハ文学の真骨頂はやたらと熱い人間ドラマと、それを取り巻く少し特異な環境。その中でもこれは特に彼女を代表する「アートもの」の作品で、今回は国立西洋美術館の設立までの実際の出来事を生き生きと描き出しています。

読了日:11月22日 著者:原田 マハ



ヴィヨンの妻 (新潮文庫)ヴィヨンの妻 (新潮文庫)感想
ヴィヨンの妻。太宰は頭のおかしい変人を描くのが本当に上手だなあとつくづく思います。太宰自身と言われているダメ夫は勿論、それと一緒にいようとする妻もなかなかに気が狂っているなと失笑半分、好奇心半分に楽しみながら読みました。かなり俗世的でありながらもどこかアーティスティックでかっこよく、さらりと読ませるのはさすがの一言。

読了日:11月17日 著者:太宰 治



パリ行最終便 (新潮文庫)パリ行最終便 (新潮文庫)感想
どうせ男が描いた性愛ものやろ、と斜に構えて読んでみたら大間違い。表題作は50年前(1972年)に描かれたというのに、これほどまでに自己愛と恋愛の狭間をいく心理は変わらないのかあと人間の単純さとアホらしさにむしろ失笑というか、元気を貰えました。短編8つ、全て読ませる作品。私はもう読むことはないでしょうがおすすめです。

読了日:11月14日 著者:渡辺 淳一



斜陽 (新潮文庫)斜陽 (新潮文庫)感想
私は物語を読むと色を感じますが、この小説は朱色でした。
これまで読んだ物語の中で、おそらく五本の指に入る好きな本です。沈む直前に赤く染まる夕焼け、そこにのたまう蛇とその情景の美しさ。ロシア人作家、黒い樹木、脳裏に浮かぶ虹。
誰しも物語の主人公や周りの人物に自分を当てはめることはあると思いますが、この物語はその哀れさ、苦しみ、全てが自分で驚きました。
穏やかで寂しいながらものんびり進む前半から一転、後半からの恐ろしいほどの疾走感へ切り替わり。狂人特有のスピード感と行動力、喪失に圧巻のひとことです。

読了日:11月11日 著者:太宰 治



ミハイル・ブルガーコフ作品集 (知の新書 A 02)ミハイル・ブルガーコフ作品集 (知の新書 A 02)感想
最近編集された本らしく、読書メーター内にこの本を見つけることが大変でした。ウクライナの国旗がカラーブロックとしてデザインされ装丁してある綺麗な本です。ブルガーコフはウクライナ出身のロシア語作家。本書内には「モスクワに住んでいる~さん」のような、思った以上にロシア感が強い作品が多く、なおさらこの戦争の意義が分からなくなりました。
読了日:11月11日 著者:



途上の旅途上の旅感想
旅のエッセイは私にとってフォーのようなもので、疲れた時に穏やかに楽しみたいもの。淡々と綴られる異国を夢見つつ、「こうやってヤマモモを一緒にとってくれる男の人と結婚したい」と語った感性豊かな友人の早逝などの哀しい部分の描写も穏やかな美しさにこころ惹かれました。色でいうと、まさにこの装丁の様な色合い。もし私が若く死んだならば、この作者のような方に記録を残してもらいたいものです。
読了日:11月08日 著者:若菜晃子



ニューヨーク製菓店 (韓国文学ショートショートきむふなセレクション 15)ニューヨーク製菓店 (韓国文学ショートショートきむふなセレクション 15)感想
何かがなくなって肩の荷が下りると言う意味のポジティブさと、喪失の悲しみの割合というのは感情や環境でコロコロ変わっていくもので、それと折り合いをつけて生きていくというのが歳を重ねるということではないのかなと、そんなことを思いました。淡々と変わる状況と情景が、全く自分とは異なる環境のはずなのにどうしてこうも重なってしまうのか。もしかしたらこれが没入感といった感情なのかなと俯瞰している自分もいます。

読了日:11月04日 著者:キム・ヨンス(金衍洙)



ルポ コロナ禍の移民たちルポ コロナ禍の移民たち感想
日本に暮らす300万人ほどの外国人、特にその中でも裕福ではない人たちがコロナ禍においてどう過ごしていたのかをインタビューと共にまとめたルポ。自分の歪んだ考えを改めさせてくれた本です。

勝手に日本ではない国の移民についての話かと思って読み始めたので、それにすら気づかずリベラルを気取っていた自分が心底恥ずかしいです。

読了日:11月04日 著者:室橋 裕和



現代ロシア文学入門現代ロシア文学入門感想
「所詮テクストしか残らない」と冒頭で語る作家。死んでも文書は残る、だからその為に書くのだというポジティブな捉え方でも、その逆にも捉えられますよね。

ロシアのウクライナ侵攻前からこの企画がなされ、惜しくもその最中に発行したという本書ですが、今回の件にしても、中高生の頃にロシア文学を読み続けた私としては何とも複雑な気分で、それは編者たちの丁寧な注意書きや文章からもにじみ出ていました。

読了日:11月03日 著者:



バイデンの光と影バイデンの光と影感想
特に悪文というわけではないですが、これを読んでバイデンに対しての印象や評価が変わるものではないでしょう。まあ可もなく不可もなくといったところで、実際核心に触れない割と浅めな本ですので、興味がある方が読まれればいいと思います。

もちろん家族を亡くしたという点は本当に辛く悲しい記憶だとは思うのですが、悩みが「つい暴走して失言」してしまうというのが最高に白人男性っぽいなと。日本の麻生さんや森さん然り、時代に合わせて自分自身をアップデートする気がないならもう引退すべきでは。

読了日:11月01日 著者:エヴァン・オスノス

読書メーター


所感

この3月から始めた読書メーターですが、メモ機能やこのまとめ機能などの便利なシステムのおかげでつくづく自分の読書体験の質が上がったと思います。

今年もあと1カ月!読めるだけの本を読み切って、いい年末を迎えたいものです。


2025年4月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

art art gallery nova アート アートギャラリー イラスト オペラ カフェ デザイン デザイン画 バレエ バンタン バンタンアカデミー バンタンキャリアアカデミー パターン パリ ファッション フランス フランス語 今日のフランス語 仏語 勉強 国内旅行 学校 家族 専門学校 専門学校日記 新国立劇場 旅行 服飾 服飾学校 服飾専門学校 東京 東京バレエ団 演劇バレエ 留学 美術 美術館 裁縫 語学 読書 読書メーター 銀座 駅前留学

1 Comment

コメントを残す