1月読書まとめ

年が明けてはや一ヶ月。ジャネーの法則「主観的に記憶される年月の長さは年少者にはより長く、年長者にはより短く感じられる」について語った昨年の夏がつい昨日のようです。

今月はどちらかというと読みたかった本ではなく、受動的に身の周りに集まってきた本を多く読んでいました。通勤時間が異様に長いことの唯一の利点ですね。思いがけず出会った本荘幽蘭という人物は退職にあたって背中を押してくれた私にとっての偉人で、これから一年が始まるというのにもうすでに2023年ベストに加えたいほどです。

月末は珍しくビジネス書を読みなおしたりして、新しい生活に想いを馳せつつ、自分自身についても少し見つめなすことが出来た一ヶ月でした。「生産的」すぎる生活に疲れることはありますが、それでも何かを達成出来た時はやはりいい気持ちですよね。

先月の読書はこちら:


限りある時間の使い方限りある時間の使い方感想
よくあるビジネス書や自己啓発本かと思えばとんでもない。「時間を資本主義的に効率良く使おう」という考えとは真逆の内容で、頑張り過ぎて生きにくい人々に救いの手を差し伸ばしてくれるような本です。
自分自身の「今」にフォーカスしようという考え方はマインドフルネスや瞑想、禅に通ずるところがあるからか、個人的にかなりの良書でした。

読了日:01月30日 著者:オリバー・バークマン



世界のマーケターは、いま何を考えているのか?世界のマーケターは、いま何を考えているのか?感想
Z世代としてアメリカを横目にみながら育った日本人として、「その通り!」感が強く、信頼して読める本です。ゴースティングの際の行為の非対称性に大いに納得し、メンタルヘルスの問題に至ってもまさに自分のことのようだと少し感動すらしました。ここまで知られていると、資本主義に生きる我々としてモノを買わざるを得ないのかなと思います。
読了日:01月30日 著者:廣田 周作



風神雷神 Juppiter,Aeolus(下)風神雷神 Juppiter,Aeolus(下)感想
夢物語、という言葉が相応しい本作。
「風神雷神図を描いた俵屋宗達がもしローマに行ったなら?」というファンタジー要素の強い物語でした。天才少年の絵へかける熱い思いと、友達として登場する天正遣欧少年使節との熱い友情は爽やかすぎる程爽やかで、まあ綺麗なものを読みたいという人にはうってつけの素晴らしい小説だと思います。

ただ、今までの原田マハ作品のゴッホやビアスリーがリアルだっただけに設定がかなり突拍子もなく、困難があったとしても船酔いと発熱くらいというのに少し拍子抜けしたというのも否めません。

奴隷貿易、ローマ教会の腐敗、ヨーロッパの植民地主義、伝染病等々から目を背け、綺麗なものだけを見たらこういう作品になるのでしょうか。

読了日:01月26日 著者:原田 マハ



風神雷神 Juppiter,Aeolus(上)風神雷神 Juppiter,Aeolus(上)感想
原田マハ作品特有の「本当の話なのか、実在した人物の名前とストーリーを繋ぎ合わせたフィクションなのか」がいつにも増してよく分からず、また登場人物が多いせいか全体的に散漫な印象でなかなか集中できなかった本作でした。ただ、織田信長という人物のアクの強さというか、そのキャラの濃さの面白さ、狩野派をはじめとする安土桃山時代の文化へかなり興味を持つようになったのでまあよかったと思います。

読了日:01月23日 著者:原田 マハ



チア男子!! (集英社文庫)チア男子!! (集英社文庫)感想
アフ6で朝井リョウさんのトークを聞き、彼の書く本を絶対読まねばと思って図書館に行ったら見つけた本書。そういえば学生時代って本当に自分に自信がなかったよな、ということを思い出して切なくなりつつ、チアの練習によって成長していく主人公と仲間のあまりの清々しさに読んでたこちらが元気付けられた作品でした。個人的に青春とスポーツの相乗効果はかなり高いと思っていて、そういう意味でこの作品はあらゆる層に刺さるのではないかなとおもいます。
読了日:01月18日 著者:朝井 リョウ



もうやってらんないもうやってらんない感想
今まで読んだどの小説とも似ても似つかない展開に、楽しめたというよりは続きが気になって読みふけったという表現が正しいのかもしれません。

この本のテーマは「潜在的な差別意識」。白人ー黒人の差別問題について、当事者でないのでなかなか理解しがたい部分が多く、「自分は差別しない」という人の自己顕示と、あくまでその選べる立場であるという優越感に吐き気が。
読了日:01月17日 著者:カイリー リード



そこに私が行ってもいいですか?そこに私が行ってもいいですか?感想
恥ずかしながら、大戦中の日本統治下の韓国での様子について韓国で書かれた本を読んだことがありませんでした。
作中読みながら嫌な予感がして、案の定看護師の仕事だと思って戦地に行ったら騙されて慰安婦の仕事を行う為だったというシーンがもうとにかくやるせなくて、それでも自分の道を切り拓いていく登場人物たちに学ぶことが多く、思わず時間を忘れて読みふけった一冊でした。

この本の凄いところは、本来非難されるべき植民地化について「戦争」という枠組みで捉え、二人の主人公がそれぞれ満洲、日本、中国、アメリカを渡り歩く成長の物語としているところ。 作者も「人間は複雑で多面的な存在で、完全な善人も悪人もいない。誰もが自らの欲望や利益を前に、揺れながら生きている。人間を日帝強占期という歴史の枠組みに閉じ込めて、二分法的に描きたくなかった」と綴るように、誰の責任なのか?自分はどういう意見を持ってどういう生き方をしたいのか?と今までの戦争文学をアップデートしたような作品です。

未だに続くロシアの侵攻を横目に、日本でも是非読まれて欲しい一冊です。 そのまま韓国ドラマにしたら57話くらいになるのかしら。


読了日:01月13日 著者:イ・グミ 著



問題の女 本荘幽蘭伝問題の女 本荘幽蘭伝感想
作者はデザイナー兼、挿話収集家という興味深い存在。その人が「特に何も成し遂げていないけど面白い人生を送った人:本荘幽蘭」の一生について延々と約300頁語ったノンフィクションです。社会学的な記述でありながら、かなり楽しく読み終えた本でした。 主人公は転職50回以上、50人近い夫を持ち、120人以上と交際し妖婦と呼ばれたモガの本家本元。これが明治、大正、昭和を跨いだ日本のファムファタールかと妙に勇気を貰えました。オペラにでもしてほしい傑作です。
読了日:01月11日 著者:平山 亜佐子



僕は美しいひとを食べた僕は美しいひとを食べた感想
清々しい程最初から最後までずっっっと「食人」の話。解説曰く、「純粋無垢・開き直った食人小説」。半世紀程前のものながら、読みやすく妙に品まであるのは作者の家柄のおかげか、翻訳者の力量故か。とにかく食事の時間に被りたくなかったので、急いで通勤中に読み切りました。『君の肝臓を食べたい』系の物を求めている方は似ているのは題名だけなので絶対に読まない方が良いです。
読了日:01月06日 著者:チェンティグローリア公爵



老害の人老害の人感想
母が作者の話を面白がって読んでいるのでこちらも一緒に読んでみました。
私はまさに働く世代、孫自慢のネタになる孫サイドなので、この物語でいう害を被っている方。
ストーリーはコメディタッチの展開を面白がりつつ、あまりのしつこさとくどさに笑えない感じになりますが、終わり方はポジティブかつ深くわりと面白かったです。人間皆歳をとっていくものですし、間違っても自分が冷笑するだけの人にはなりたくないものです。
読了日:01月04日 著者:内館 牧子



ラディゲの死 (新潮文庫)ラディゲの死 (新潮文庫)感想
表題『ラディゲの死』。物語の中だけでなく、作者自身のラディゲへの追悼、敬意や憧れが詰まっていてなかなか興味深い作品でした。
「三島は彼自身のコクトーを見つけ出せなかった」とコメントしている人がいましたが、それもまた彼があのような最期を迎えないといけなかった理由の一つでもあるのかなと。

この表紙と題材でなんとなく原田マハ『サロメ』のビアスリーとワイルドを主思いだしました。耽美主義的というか、あの暗さと美しさというか。憧れないけど純粋に文学的に美しいと思います。

読了日:01月03日 著者:三島 由紀夫



たぶん、愛の話たぶん、愛の話感想
世界で最も好きな本の一つ。誕生日と年末年始は好きな本を読んでいたかったので久しぶりに読み返していました。

たぶん、この表題の愛が意味するのは「パリ」という街。「恋愛しその流れで子供が生まれてしまったら子育ての為にこの街を捨てることになるから、自分はそんなバカなことをしているわけにはいかない」というよく分からない考え方が非常に面白く、ツボです。
「別離ほどつらい体験はない」のくだり等、日常的に思う物事の解説も言葉の選び方が独特で最高。この淡々とした世界にずっと浸っていたいです。
読了日:01月02日 著者:マルタン パージュ

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