先日友人と日本橋のアーティゾン美術館(旧ブリジストン美術館)へ行ってきました。
祖父曰く、ブリジストン美術館は(上野を除いて)昔東京にあった唯一の洋画の美術館だったのだとか。
私もフランス留学時代に、オーランジェリー美術館でブリジストン美術館とTokyo-Parisコラボ展を行っているところに訪れていたので、なんだか妙に思い入れがある美術館です。




さて、そんな2020年に改装オープンし名前を変えてからも何度か伺っているアーティゾン美術館、今回は『STEPS AHEAD:Recent Acquisitions 新収蔵作品展示』を見てきました。

2月13日から行われているこの企画展の、私の一番の目的は
抽象表現主義の女性画家たちのセクション
でした。

そもそも抽象表現主義とはなんなのか。
1940年代後半から50年代にかけてニューヨークを中心に広まった抽象表現主義は、その名の通り具体的なモチーフを持たず、巨大なキャンバスに描かれ、感情を表現したスタイルです。「ザ・ニューヨーカー」誌が1945年に抽象表現主義という言葉を初めて用いたのが始まりとされています。
そしてなぜここ、アーティゾン美術館はこれほど抽象絵画、はたまた女性画家の作品を沢山保有しているのか。
もともと石橋財団はブリヂストン美術館時代より戦後のフランス抽象絵画の展開に目を向けてきており、その研究過程のなかで第二次世界大戦後にアメリカで発生し、世界的に影響を与えた抽象表現主義の勃興に、女性画家たちの活躍も大いに寄与していることが浮き彫りにされていった
https://lp.p.pia.jp/shared/cnt-s/cnt-s-11-02_2_3dd78679-3495-4498-b4fa-47e0150a2c6f.html
私はポロックをはじめとする抽象画の作品が大好きなので、それはもうとても楽しみにしていました。面白いことに旦那が著名な画家である女性画家も多く、展示してあったリー・クラズナーも前述ポロックの奥様でした。
当時女性が職業として芸術を追求できるのは美術教師としてだけであり、そのために教育免許を取り(*1)、昼夜問わず芸術家として邁進し続けた彼女。今回のパンフレットの表紙の作品です。

『ブルーミシガン』は数ある作品の中で私が一番惹かれたもの。
いささかの性急さ、情熱、その思いきり、色合いがなんともポジティブな感情を刺激するのです。

https://www.instagram.com/p/CMCalhAnfUT/?igshid=1k7ed1g7vxsiv
作者のジョアン・ミッシェルJoan Mitchell (February 12, 1925 – October 30, 1992) はアメリカ出身のパリで活躍した、20世紀のアーティスト。シカゴ生まれで、生涯の間に画家としてかなりの商業的成功を収めていました。慣れ親しんだミシガン湖をイメージして描いています。
今年5月から、フランスはパリにあるポンピドゥーセンターが「美術史において女性アーティストたちが抽象芸術の発展に果たした貢献に注目する」展覧会(*2)を行うということで、アートシーンを大きく開拓していった女性たち、というテーマの展覧会は今後増えていきそうでとても楽しみです。
観覧後、一番印象に残ったのはやっぱりピカソ
13のテーマがあるこの企画展を見終え、大満足の友人と私は話し合いました。「どれが一番印象に残った?」と。
「「やっぱりピカソだな」」
展覧会の感想としてはいささか凡庸な感想ではありますが、ピカソの絵がとても印象に残りました。

フランスからちょうど帰国した友人がこの絵を見て言ったのは「確かにブルゴーニュってこんな感じなんだよね、こういう感じの色合いなの」
大量に作品がある中で、これだけ人の記憶に残る作品を作るというのはなんというか、流石の一言。フランスの作家、ボードレールは同じく作家のバルザックの文学について「バルザックにおいては門番までもが天才である」という言葉を残しています。(*3)まさに絵画におけるピカソですね。彼の作品においては新聞紙までもが天才です。
彼が残した作品は7万点ほどと言われており、(多すぎて若干辟易してしまいますが)今後もっと学んで鑑賞していけたら楽しいですよね。
レストランでいただいたのはエビのリゾット。

炭火の薫りが閉じ込められて蓋がしまったまま登場し、自分で開ける時の楽しさったら。
パン、デザート、ハーブティーもセットの2,000円。
少し高めだとは思いますが…まあたまにはこんな貴族的な贅沢もいいでしょう。素敵な空間で美味しいお食事を楽しく食べられて幸せな時間でした。



私は自分で家を持ったら抽象画を沢山飾るのが夢。それを探す意味でも、もっとたくさんの作品に触れていきたい。
4月からは都内でまた沢山の面白そうな展覧会があり、色々訪れるのを楽しみにまた頑張っていけそう。
若、一日素敵な時間をありがとう!




引用・参考
*1 https://www.elle.com/jp/culture/music-art-book/a238458/cfe-women-in-ny-art-history170824/
*2 ポンピドゥーセンターで行われる『Elles font l’abstraction』:https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/23329
*3 中条省平『人間とは何か 偏愛的フランス文学作家論』107頁